栃の葉

戦後70回目のお盆を迎えて

今年の八月十五日は七十回目の終戦の日です。

奇しくもお釈迦様がお悟りになられた十二月八日に開戦を迎えた太平洋戦争は、日本人戦没者だけでも約三百十万人に上りました。

「すべての者は暴力におびえる。すべての者は死を怖れる。自分に引き寄せて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。」(法句経)との教えをいただく身として、複雑な思いを拭いえません。

先般、「火垂るの墓」が放送されておりました。
原作者野坂昭如の戦争体験を元に、戦争で人が変って行く様、そして必死で生き抜こうとする親を亡くした兄妹の餓死までを描き、あまりの無慈悲さに涙が止まりませんでした。戦後七十年、戦没者一人ひとりに実際に起きた悲劇を、今を生きる私たちが想像し、改めて冷静に見つめ直し、次代に伝えていく必要があるのではないでしょうか。野 坂氏は、スローガンや運動としての「反戦」ではなく、戦争がいかに悲惨な状態をもたらすかという「厭戦」の心情を広めたいと、エッセイで語っています。厭 戦とは人を殺したくないし、殺されたくもないという、人としての生理的感覚であり、それはまさに法句経の教えのようです。 

戦争の悲惨さ、平和のありがたさ、そして命のありがたさについて今一度考える時なのかもしれません。

 

栃の葉